家族・住まいの防災

高齢者の防災|離れて暮らす親を守る7つの備えと福祉避難所の使い方

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「離れて暮らす親の防災、何から始めればいいかわからない」

そんな声を、災害対応の研修や地域防災の現場でよく聞きます。

高齢者は、災害時に通常の何倍も助けが必要な「要配慮者」と位置づけられています。実際、東日本大震災の犠牲者の約6割が65歳以上、能登半島地震でも同様の傾向が報告されています。

それでも——

  • 親は「迷惑かけたくない」と備えを後回しにする
  • 子は「実家に頻繁に通えない」と備えに踏み込めない
  • 福祉避難所や要援護者制度を知らない

こうした「すれ違い」で備えが進まない家庭が、本当に多いです。

この記事では、内閣府・厚労省のガイドラインと、消防歴15年で学んだ災害対応の知見をもとに、高齢の親を守るために子世代ができる7つの備えを整理します。

まもる(worry) まもる

実家の親が高齢で…遠くに住んでいるから、災害時にどう守ればいいか心配で。

ケン(normal) ケン

離れて暮らす親の防災は、「自分が動けない前提で備えを設計する」のがポイントだよ。地域の制度をうまく使えば、子世代でも十分に守れるんだ。

この記事でわかること

高齢者が災害時に直面する5つのリスク

内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」では、高齢者を最優先で配慮すべき対象として位置づけています。

① 避難に時間がかかる・できない

足腰の衰え、視力・聴力の低下で、避難自体が困難。実際、東日本大震災の津波犠牲者の多くが「逃げ遅れ」の高齢者でした。

② 情報が届かない・理解しにくい

スマホを使わない高齢者は、防災アプリ・SNSによる速報を受け取れません。テレビ・防災行政無線が頼みの綱ですが、停電で使えないケースも。

③ 持病・薬の問題が深刻

普段服用している薬がないと、わずか数日で命に関わるケース(心臓病・糖尿病・高血圧など)があります。災害時の薬の入手は想像以上に困難です。

④ 認知症の場合は行方不明リスク

避難所の混乱で、認知症のある高齢者が徘徊・行方不明になる事例が報告されています。災害時は普段以上に判断力が落ちます。

⑤ 体力低下による二次被害

避難所生活のストレス・運動不足で、エコノミー症候群・誤嚥性肺炎・床ずれなどの災害関連死が増加。能登半島地震でも多数報告されました。

💡 プロのワンポイント

災害関連死は、災害時の直接的な被害ではなく、避難生活の中で命を落とすことです。東日本大震災の災害関連死の約9割が65歳以上。「助かった後」にも大きなリスクがあることを、家族で知っておく必要があります。

子世代ができる7つの備え

「離れて暮らしているから無理」と思いがちですが、遠くからでもできることは意外と多いです。

備え①|薬とお薬手帳の管理

  • 普段の薬は最低1ヶ月分を自宅にストック(病院相談で対応可能なケースが多い)
  • お薬手帳のコピー+スマホ写真の2系統で保管
  • 「お薬カレンダー」で残量を可視化

残量の見える化には、壁掛けタイプのお薬カレンダーがよく使われています。曜日×朝昼晩のポケットに薬をセットしておくだけで、飲み忘れと残量が一目でわかります。帰省したときに子世代が残量をパッと確認できるのも大きなメリット。「カレンダーの薬、あとどれくらい?」と電話で聞ける状態を作っておくと、離れていても薬切れを防げます。

備え②|防災用持出袋を玄関に

高齢者の体力に合わせた軽量タイプの持出袋を玄関に常備。中身も「重すぎず・取り出しやすく」がポイントです。

  • 水・食料は3日分(軽量タイプ)
  • 持病の薬・お薬手帳のコピー
  • 老眼鏡の予備
  • 補聴器の予備電池
  • 入れ歯ケース・洗浄剤
  • 杖(必要な方)

高齢者の持出袋は「軽さ」が最重要です。背負って歩けない持出袋は、いざというとき玄関に置いていかれます。山善の「防災バッグ30」のような、基本装備30点が軽量リュックにまとまったセットが定番。届いたら持病の薬・お薬手帳のコピー・老眼鏡・入れ歯ケースなど「その人専用の中身」を足して、玄関に置いてもらいましょう。帰省時のプレゼントとして渡すと、親も受け取りやすいのでおすすめです。

備え③|情報伝達手段の確保

  • スマホは家族からのLINE・電話が来る前提で常時持参
  • 防災ラジオ(手回し・乾電池両対応)を1台
  • 防災行政無線の屋外スピーカーの場所を把握

スマホを使わない親世代には、ラジオが災害時の生命線になります。手回しと乾電池の2way電源タイプなら、停電が長引いても情報が途切れません。LEDライト・スマホ充電機能付きなら1台3役。買って送るだけでなく、帰省時に一緒に「電源の入れ方・選局の仕方」を確認しておくと、本番で確実に使えます。

備え④|家族の連絡先一覧を冷蔵庫に

災害時、親が混乱して連絡先を思い出せないことがあります。家族・主治医・地域包括支援センターの連絡先を1枚にまとめて冷蔵庫に貼っておきましょう。

備え⑤|要援護者名簿への登録

多くの自治体で、災害時に支援が必要な高齢者を事前登録する「要援護者名簿」「避難行動要支援者名簿」制度があります。登録すると、消防・民生委員・自主防災組織が安否確認に動いてくれます

備え⑥|近所とのつながりを作る

「○○さんは隣の◯◯です」と挨拶しておくだけで、災害時に近所の人が安否確認に来てくれる確率が大きく上がります。子世代が帰省したときに、近所への顔合わせをするのも一つの手です。

備え⑦|防災行動を家族会議で共有

「災害が起きたら、まずどこに避難する?」「どうやって連絡を取る?」を家族全員で1回話し合っておくこと。離れて暮らす場合も、年末年始の帰省時にでも30分時間を取って共有を。

まもる(surprise) まもる

7つもあると大変…でも、お薬と持出袋から始められそうですね!

ケン(nod) ケン

そう、全部一気にやろうとしなくていい。まずは薬と持出袋の2つから始めれば、それだけで親の防災力は大きく上がるよ。

福祉避難所と要援護者制度の使い方

多くの方が知らないのですが、高齢者・障害者・乳幼児のための専用避難所が制度化されています。

福祉避難所とは

通常の避難所では生活が難しい高齢者・障害者向けに、バリアフリー設備・医療スタッフ・福祉用具を備えた避難所です。一般避難所を経由して開設されることが多く、直接行ける施設は限られます。

「○○市 福祉避難所」で検索

ほとんどの自治体がリストをWeb公開しています。実家から最寄り2〜3箇所をスマホメモに保存しておきましょう。

要援護者名簿(避難行動要支援者名簿)

災害対策基本法に基づき、避難に支援が必要な人を事前登録する制度。登録すると:

  • 民生委員・自主防災組織が安否確認に動く
  • 消防・警察が個別訪問することがある
  • 避難所での優先配慮を受けられる

申請はお住まいの市区町村の福祉課・防災課で。子世代が代理申請できる場合が多いので、帰省時に手続きしておくのがおすすめです。

⚠️ 平時に必ず確認

福祉避難所も要援護者制度も、平時に準備していないと災害時には機能しません。「災害が起きてから役所に駆け込む」のではなく、今のうちに自治体窓口で詳細を聞いておくこと。電話1本でも始められます。

認知症の家族がいる場合の対策

認知症の高齢者がいる家庭は、通常の防災に加えて専用の備えが必要です。

行方不明対策

  • GPS発信機(小型タイプ・首から下げる)
  • 見守りシール(衣類に貼って警察照会で身元確認)
  • 自治体の「徘徊SOSネットワーク」に登録(多くの自治体で無料)

GPS端末は、いつものバッグや杖、普段履く靴など「本人が外しにくい場所」に付けるのが運用のコツ。家族のスマホから現在地を確認できます。月額数百円の通信料がかかるタイプが主流ですが、災害時だけでなく日常の見守りにも使えるので、行方不明時の捜索負担を考えれば十分に価値のある備えです。

普段から練習

  • 慣れない避難所では混乱が増します
  • 普段から「もしもの時はここに行く」と何度も声かけ
  • 家族の写真・住所メモを衣類のポケットに常時

専門家に頼る

地域包括支援センターは、認知症対応の防災相談を受け付けています。「災害時の備え、どうしたらいい?」と聞くだけで、ケアマネージャーが具体策を提示してくれます。

災害時の特殊詐欺にも注意

意外と知られていませんが、災害後は高齢者を狙った特殊詐欺・悪質商法が急増します。

  • 「義援金が当たりました」電話詐欺
  • 「屋根の修理を無料で見ます」訪問詐欺
  • 偽の保険金請求代行

警察庁・消費者庁も注意喚起していますが、被害は後を絶ちません。「災害後の電話・訪問は全て家族に相談してから対応」というルールを、平時から親と決めておきましょう。

今日からできる3つのアクション

「全部一気にやるのは無理…」という方へ、優先順で3つ紹介します。

① 親に電話して「お薬1ヶ月分」を確認

5分の電話で済みます。普段の薬の残量を確認し、不足していれば次回受診時に「災害用に多めにもらう」ことを相談するよう伝える。

② 「○○市 福祉避難所」「○○市 要援護者名簿」で検索

実家の最寄りの福祉避難所と、要援護者名簿の申請窓口を確認。子世代がリスト化してスマホメモに保存しておきましょう。

③ 家族の連絡先一覧を冷蔵庫に貼ってもらう

「家族・主治医・地域包括支援センター・近所の◯◯さん」の連絡先を1枚にまとめて、冷蔵庫の見える場所に貼る。次の帰省時に持参するのが現実的です。

まもる(happy) まもる

今度の週末、実家に電話してお薬の話してみます。

ケン(happy) ケン

その一本の電話が、いざというときに大きな差を生むよ。離れていても、できることはたくさんある。それを知っているだけで、親も安心するはずだよ。

まとめ|高齢者の防災は「平時の準備」が9割

災害が起きてから動く、では遅い。今のひと電話・ひと手続きが、親の命を分けます。
優先度アクション
⭐⭐⭐持病の薬を1ヶ月分ストック+お薬手帳のスマホ写真
⭐⭐⭐福祉避難所・要援護者名簿を自治体で確認・登録
⭐⭐⭐軽量持出袋を玄関に常備
⭐⭐家族・主治医の連絡先を冷蔵庫に貼る
⭐⭐認知症の方は GPS・見守りシールを準備
⭐⭐近所との挨拶・つながり作り
帰省時に家族で防災会議

高齢者の防災は、「災害が起きてから動く」では遅いのが現実です。平時の小さな準備の積み重ねが、いざというときに親の命を守ります。

今日やること:実家に電話して「お薬、ちゃんと余分にある?」と聞いてみる。それだけで、防災レベルが一段上がります。

参考・出典

  • 内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」
  • 厚生労働省「災害時要援護者対策に関するガイドライン」
  • 厚生労働省「災害時における高齢者・障害者支援」
  • 警察庁「災害時の特殊詐欺対策」
  • 各自治体の「福祉避難所」「要援護者名簿」制度

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そなえ
ケン

元消防士|消防・救助・救急・日勤 計15年の現場経験を持つ防災ライター。現場を知る人間にしか書けない、リアルで実用的な防災情報を発信しています。