家族・住まいの防災

避難所は女性にとって安全?|国の指針が定める防犯対策と、不安なときの選択肢

※ 本記事にはアフィリエイト広告が含まれています。紹介する商品は、執筆者が現場経験をもとに調査・検討したうえで掲載しています。

「避難所に行くのが不安」

実際に、そう検索している人がいます。

その不安は、わがままでも考えすぎでもありません。

国は、避難所での女性の安全確保について、具体的な対策を定めたガイドラインを出しています。わざわざ国が定めているということは、それだけ課題があると認められているということです。

この記事では、その指針に何が書かれているのかを整理します。知っておけば、「これは求めていいことだ」と分かります。

✅ 結論|この記事で伝えたい3つ

① あなたの不安は、国も課題として認めています
トイレの施錠、男女別の更衣室、巡回、女性の相談窓口——すべて指針に明記されています

② 避難所に行かない、という選択もあります
在宅避難・親戚宅・車中泊。建物が無事なら、避難所だけが正解ではありません

③ 困ったときの相談先は #8891
性暴力被害の相談窓口。最寄りの支援センターにつながります(受付時間は地域によって異なります)

まもる(worry)まもる

避難所が不安だなんて、言いにくい気がします。みんな大変なときなのに…。

ケン(nod)ケン

そう思ってしまう人は多い。でもね、国のガイドラインが「対策しなさい」と書いていることを求めるのは、わがままじゃないんだ。まず何が定められているかを知るところから始めよう。

この記事でわかること

この記事の立場について

先に、正直に書いておきます。

防犯は、消防の専門分野ではありません。 警察が主体となって取り組む領域です。僕は消防で15年働きましたが、避難所の防犯対策について専門的な訓練を受けたわけではありません。

なので、この記事は「現場で見たこと」として書いていません。公的な資料を調べて、わかりやすく整理したものです。

それでも書こうと思ったのは、指針の中身が、必要な人にほとんど届いていないと感じたからです。国の資料は、そもそも自治体や避難所の運営者に向けて書かれています。避難する側の人が読む前提になっていません。

出典はすべて記事の最後に載せています。原典にあたれるようにしてあります。

国の指針が避難所に求めていること

内閣府は2020年(令和2年)に「災害対応力を強化する女性の視点〜男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン〜」を出しました。

そこに書かれている、避難所での安全確保の中身です。

トイレについて

  • 男女別に設置する
  • 女性用トイレの数を、男性用より多くする
  • 照明をつける
  • 鍵(錠)をつける
  • 女性が巡回する
  • 多目的トイレも設置する

更衣室について

  • 男女別に設置する
  • 昼夜を問わず、安全に安心して使えるよう配慮する
  • 女性用更衣室には、女性が巡回する

就寝スペースについて

  • プライバシーが十分に確保された間仕切りで、世帯ごとのエリアを設ける
  • 女性専用スペースを開設する

巡回・警備について

  • 巡回警備は、男女ペアで行う
  • 女性用トイレ・更衣室は、女性が巡回する

相談窓口について

  • 女性相談員を配置する
  • 女性専用の相談窓口を設置する

運営体制について

  • 避難所の管理責任者は、男女両方を配置する
  • 運営組織の役員は、女性を3割以上にすることを目標とする

あなたの不安は「わがまま」ではない

ここまで読んで、どう感じたでしょうか。

「トイレに鍵をつける」「照明をつける」「男女別にする」——当たり前のことのように思えます。でもわざわざ国が明記しているということは、裏を返せば、それができていない避難所があったということです。

実際、2024年の能登半島地震では、内閣府男女共同参画局が地震が起きたその日のうちに石川県などへ事務連絡を出しました。さらに1月17日には全国の都道府県に向けて、「避難所チェックシート」を使った避難所運営を要請しています。

その文書には、こう書かれています。

「過去の災害時においてDVや性暴力が発生していることが明らかになっており、また、被害の潜在化も懸念される」

石川県も、DV・性暴力の防止を呼びかけ、相談窓口を知らせるポスターを作って避難所に掲示しました。

2020年にガイドラインを出したときも、能登半島地震のときも、国は全国に通知を出しています。 繰り返し出すのは、それが必要だと判断されているからです。

💡 知っておくことの意味

避難所で「トイレに鍵がない」「間仕切りがない」と感じたとき、それは我慢すべきことではなく、国の指針に届いていない状態です。
伝える相手は、避難所の運営本部(受付のあるところ)です。自治体の職員、避難所運営委員会の方、保健師さんなどがいます。そう伝えることは、あなただけでなく、そこにいる全員のためになります。

そして、もうひとつ大事なことがあります。

対策の責任は、避難する人ではなく、避難所を運営する側にあります。

指針が並べているのは、設備・巡回・人員配置です。個人の心がけの話ではありません。「気をつけていなかったから」と、被害にあった人が責められる理由はどこにもない——これは、はっきり書いておきたいと思います。

もちろん、防犯ブザーを持つ、明るい時間に動く、といった備えに意味がないわけではありません。ただそれは「自己責任」の話ではなく、環境が整うまでの間、自分を守る手段として持っておくもの。順番を間違えないでほしいのです。

まもる(serious)まもる

「気をつけていなかったから」じゃない、っていうのは、聞いておいてよかったです。

ケン(normal)ケン

うん。そこを勘違いすると、被害にあった人が声を上げられなくなる。指針が求めているのは環境の整備であって、避難する人の努力じゃないんだ。

避難所に行かない方がいいと感じたら

「避難所 行かない方がいい」と検索する人がいます。その気持ちも、否定しません。行かない、という選択もあります。

避難とは、避難所に行くことではありません。安全な場所へ移ることです。

選択肢は、いくつかあります。

選択肢向いている場合注意点
在宅避難建物が無事で、備蓄がある物資や情報が届きにくいことがある。物資を受け取るには最寄りの避難所で登録が必要な自治体もある
親戚・知人の家安全な地域に頼れる人がいる事前に話をつけておく必要がある
ホテル交通手段があり、費用を出せる災害時はすぐ満室になる
車中泊他に行き先がないエコノミークラス症候群のリスク。定期的に体を動かすこと

大事なのは、当日その場で決めないことです。

「避難所がつらかったら、どうするか」を先に決めておけば、当日に絶望しなくて済みます。行き先の候補を3つ持っておく。それだけで、選べる立場になります。

ただし、ひとつだけ。建物が危険なとき、浸水のおそれがあるときは、迷わず避難所へ行ってください。 命が最優先です。避難所の環境の話は、その次に考えることです。

困ったときの相談先

いま、身の危険を感じているなら

相談窓口の前に、先にこちらを書きます。

🚨 今まさに怖い思いをしているとき

① その場を離れて、人のいるところへ移動する
本部の受付、出入口、通路など、人目のある場所へ。

② 避難所の運営本部に伝える
「場所を移りたい」と言うだけで構いません。理由を詳しく話せなくても大丈夫です。

③ 身の危険があるときは 110番
避難所の中でも、ためらわずに呼んでいい。災害中だから通報してはいけない、ということはありません。

相談できる窓口

💡 性犯罪・性暴力に関する相談|#8891(はやくワンストップ)

全国どこからでも、最寄りのワンストップ支援センターにつながる短縮番号です。医療・法律などの専門的な支援につないでもらえます。

⚠️ 受付時間はセンターによって異なります。24時間365日の地域もあれば、平日の日中だけの地域もあります。夜間・休日は別のコールセンターにつながる地域もあります。

電話が難しいときは、SNS相談「Cure time(キュアタイム)」(内閣府の事業・毎日17〜21時・チャット)。

配偶者や恋人からの暴力は DV相談ナビ #8008(はれれば) へ。

被害を「たいしたことない」と判断する必要はありません。迷った段階で相談して大丈夫です。

避難所には、女性相談員や女性専用の相談窓口を設置するよう、国の指針が求めています。見当たらないときは、運営本部で「女性の相談窓口はどこですか」と聞いてください。

まとめ|知っておくことが、守ることになる

ポイント要点
⭐⭐⭐対策の責任は、運営する側にある。 避難する人の心がけの問題ではない
⭐⭐⭐国の指針はトイレの施錠・照明・男女別、男女ペアの巡回、女性相談窓口を定めている
⭐⭐⭐相談先は #8891(全国共通・受付時間は地域により異なる)。身の危険があれば110番
⭐⭐避難所以外の選択肢もある。行き先の候補を3つ持っておく
⭐⭐「鍵がない」「間仕切りがない」は、我慢せず運営に伝えていい
⭐ただし建物が危険なとき、浸水のおそれがあるときは、迷わず避難所へ

避難所は、完璧な場所ではありません。それでも、良くしていくための基準は、すでに国が示しています。

その基準を知っている人が増えるほど、避難所は変わっていきます。知ることは、自分を守ることであり、次に避難する誰かを守ることでもあります。

今日やること:お住まいの自治体の防災ページで、女性向けの防災ガイドが出ていないか見てみてください。多くの自治体が作っています。5分で、自分の地域の状況がわかります。

参考・出典

  • 内閣府男女共同参画局「災害対応力を強化する女性の視点〜男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン〜」(令和2年5月) ― 避難所におけるトイレ・更衣室・就寝スペース・巡回・相談窓口・運営体制の取組事項に関する出典。
  • 内閣府男女共同参画局「避難生活|災害対応力を強化する女性の視点」 ― 具体的な取組内容の出典。
  • 内閣府男女共同参画局 事務連絡「令和6年能登半島地震による災害対応における男女共同参画の視点からの取組促進について(依頼)」(令和6年1月17日) ― 能登半島地震における避難所チェックシートの活用要請、DV・性暴力の発生と潜在化に関する記述、石川県のポスター作成、DV相談ナビ #8008 の出典。
  • 内閣府男女共同参画局「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」 ― #8891 および各センターの受付時間(地域により異なること)に関する出典。
  • 内閣府「Cure time(キュアタイム)」 ― SNS相談の受付時間(毎日17〜21時)に関する出典。
  • 警察庁「令和3年版犯罪被害者白書」 ― 全国共通短縮番号 #8891 の運用開始に関する出典。

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ケン
ケン

元消防士|消防・救助・救急・日勤 計15年の現場経験を持つ防災ライター。現場を知る人間にしか書けない、リアルで実用的な防災情報を発信しています。