エアコンが使えない…暑くて死にそうな時の対処法|元消防士が教える停電時の熱中症対策
停電で止まった。壊れて動かない。理由は何であれ、真夏にエアコンが使えない部屋は、命にかかわる場所になります。
- 涼しい場所へ移動する。近くの商業施設・図書館・公民館へ。「クーリングシェルター」が開いていることもあります
- 首すじ・わきの下・足のつけ根を冷やす(おでこではありません)。保冷剤か濡れタオルで
- 経口補水液か、水+塩分をとる。のどが渇いていなくても飲んでください
⚠️ 呼びかけへの反応がおかしい・自分で水が飲めないなら、迷わず119番です。詳しくは救急車を呼ぶ判断基準へ。
この記事では、消防歴15年の僕(ケン)が、消防庁や環境省の情報をもとに、エアコンが使えないときの乗り切り方と、危険なサインの見分け方を整理します。停電に備える方法も後半でお伝えします。
まもる エアコンが使えないと、こんなに部屋が暑くなるんですね…。これって我慢していいんでしょうか?
ケン 我慢はしないでほしい。実は熱中症って、屋外より「家の中」で起きることがいちばん多いんだ。しかも自覚より先に進んでいく。まずは体を冷やして、危ないサインを知っておこう。そのうえで、次に停電したときの備えも考えていこう。
この記事でわかること
救急車を呼ぶ判断基準
まず、いちばん大事なところからお伝えします。救急の現場で15年見てきて、いちばん多かったのが「もっと早く呼んでくれれば」という後悔でした。
迷わず119番するサイン
- 呼びかけへの反応がおかしい(受け答えがかみ合わない、もうろうとしている、意識がない)
-
自分で水を飲めない
- けいれんしている・全身が熱いのに汗が出ていない
とくに「自分で水が飲めない」は、はっきりした危険信号です。ここまで来たら、水を飲ませようと粘るより、救急車を呼んでください。
意識がはっきりしないときは、飲ませない
反応があいまいな人に無理に水を飲ませると、気管に入って(誤嚥)肺炎を起こすことがあります。飲ませるのは、自分でしっかり飲める人だけ。それ以外は「冷やしながら救急車を待つ」が正解です。
重症度の見分け方(I度〜IV度)、救急車を待つ間にできること、やってはいけない処置(毛布をかける・解熱剤・アルコールで拭く 等)は、専用の記事にまとめました。
👉 熱中症の応急処置|元消防士が教える「救急車を呼ぶ判断」とやってはいけない処置
まもる 「救急車を呼ぶほどかな…」と迷ってしまいそうです。
ケン その迷いが、いちばん危ないんだ。熱中症は数十分で悪くなる。迷ったら呼んでいい。判断に困るなら♯7119(救急安心センター)で相談もできる。遠慮して手遅れになるほうが、ずっと怖いよ。
熱中症は「家の中」がいちばん多い
まず、意外と知られていない事実からお伝えします。
消防庁のまとめでは、2025年の夏(5月〜9月)に熱中症で救急搬送された人は、全国で10万人を超えて過去最多になりました。
そして、発生場所でいちばん多いのは、炎天下の屋外ではありません。自宅などの「住居」です。搬送された人の約4割が、家の中で熱中症になっています。搬送者の半数以上は65歳以上の高齢者でした。
つまり、エアコンが普通に使える平時でさえ、家の中は熱中症の主戦場だということです。そこから電気が消えたら何が起きるか——想像がつくと思います。
現場で救急要請を受けて駆けつけると、室内が蒸し風呂のようになっていることがよくありました。本人は「我慢できる」と思っているうちに、体は限界を超えていきます。熱中症は自覚より先に進行する——これが怖いところです。
真夏の大停電は、実際に起きている
「何日も停電するなんて、めったにないのでは?」と思うかもしれません。
2019年9月の台風15号(房総半島台風)では、千葉県を中心に最大約93万戸が停電しました。多くの地域で復旧まで数日から1週間以上、山間部では約2週間かかっています。
このとき気温は30度を超える日が続き、消防庁は「大規模停電下における熱中症の予防対策」を自治体に通知しました。停電と熱中症の組み合わせは、国が対策文書を出すレベルの、現実の脅威なんです。
台風は毎年来ます。そして大きな台風の後には、高い確率で停電が起きます。詳しい台風への備えは台風・大雨の記事にまとめていますが、この記事では「停電した後の暑さ」に絞って続けます。
停電したら、まず「涼しい場所」へ
真夏に停電したときの大原則は、シンプルです。
家で我慢しない。涼しい場所へ移動する。
災害時は「自宅にとどまる」が基本になる場面も多いですが、真夏の停電だけは別です。熱中症は、我慢で防げません。
頼れる「涼しい場所」の例
- クーリングシェルター:市町村が指定した、誰でも入れる冷房のきいた施設(公民館・図書館など)。2024年から法律にもとづく制度になりました。お住まいの自治体のホームページで「クーリングシェルター」と検索してみてください
- 停電エリア外の商業施設:ショッピングモールやスーパーは、停電が部分的なら営業していることが多い
- 親戚・友人の家:停電していない地域に頼れる人がいれば、遠慮なく頼る
「暑くなってきたな」と感じてからでは遅めです。停電が数時間で復旧しそうにないとわかった時点で、移動を決めてください。特に高齢の家族、赤ちゃん、持病のある人がいる家庭は、迷ったら移動です。
環境省の「アラート」を移動の合図に
環境省と気象庁は、危険な暑さが予想される日に熱中症警戒アラートを発表しています。さらに危険度が高い日には、一段上の「熱中症特別警戒アラート」が出ます。
停電中にこのアラートが出ている日は、「家でしのげるか」を考える日ではありません。涼しい場所へ動く日です。スマホの防災アプリやラジオで確認できます。
家でしのぐと決めたら、やること4つ
移動が難しい場合や、夜間など、家でしのぐ場面もあります。そのときは、次の4つを実行してください。
①|水分と塩分を、のどが渇く前にとる
基本ですが、いちばん命に直結します。汗をかくと、水分と一緒に塩分も失われます。水だけでなく、経口補水液や塩あめ、梅干しなどを組み合わせてください。
「トイレが心配だから」と水分を控えるのは、いちばん危険です。
②|「太い血管」を冷やす
体を効率よく冷やすには、場所が大事です。首すじ、わきの下、足のつけ根——太い血管が皮膚の近くを通る場所を、保冷剤や濡らしたタオルで冷やします。
おでこを冷やすより、ずっと効きます。
③|日中は熱を「入れない」、夜は熱を「逃がす」
日中は、カーテンや雨戸を閉めて直射日光を防ぎます。窓から入る熱が、室温上昇のいちばんの原因だからです。
日が落ちたら逆に、窓を2か所以上開けて風の通り道を作ります。外気温が下がる夜は、換気が冷房代わりになります。
④|いちばん涼しい部屋で過ごす
家の中でも、部屋によって温度はかなり違います。北側の部屋、風通しのいい部屋、1階(2階建てなら)。「家の中の避暑地」に家族で集まって過ごしてください。
まもる おでこじゃなくて、首やわきの下を冷やすんですね。知りませんでした!
ケン そう、太い血管を冷やすと、冷えた血液が全身を回ってくれる。保冷剤ひとつでも、当てる場所で効果が全然違うんだ。覚えておくと、停電時以外でも役に立つよ。
電気に頼らず涼を作る「暑さの備え」
ここからは、事前にそろえておきたいものです。ポイントは、電気がなくても使えるもの+少しの電気で動くものの2段構えにすることです。
電気がなくても使えるもの
- 保冷剤(強力タイプ)+クーラーボックス:体を冷やす要。凍らせておけば、停電後も半日〜1日使えます。冷蔵庫の食品の延命にも
- 経口補水液・塩あめ:水分+塩分補給用。普段の熱中症対策と兼用できます
- うちわ・冷感タオル:地味ですが、濡らして首に巻くだけで体感が変わります
少しの電気で動かすもの
停電時の「涼」の主役は、扇風機です。エアコンは無理でも、扇風機なら小さな電源で動きます。
- ポータブル電源:扇風機(消費電力30〜50W程度)なら、容量500Whクラスで一晩動かせる計算です。スマホの充電も兼ねられます
- モバイルバッテリー+USB扇風機:ポータブル電源がなくても、この組み合わせで顔まわりの風は確保できます
容量の選び方や電源の備え全般は、停電対策の記事で詳しく解説しています。
熱中症搬送の半数以上は高齢者です。暑さを感じにくくなり、「もったいない」とエアコンを我慢しがちなことが背景にあります。停電時に限らず、夏は離れて暮らす親への声かけを習慣にしてください。詳しくは高齢者の防災の記事へ。
よくある質問
読者の方からよくいただく質問に、まとめてお答えします。
Q. エアコンなしで、いちばん早く涼しくなる方法は?
濡らしたタオルを首に巻いて、風を当てるのがいちばん手軽で効果的です。水が蒸発するとき体の熱を奪う(気化熱)ので、うちわや扇風機と組み合わせると体感が大きく変わります。あわせて足を水につける(洗面器で足だけ)のも、じつは効きます。
Q. 扇風機だけで熱中症は防げる?
室温が体温より高いときは、扇風機だけでは危険です。熱風を当てているのと同じで、汗が出なくなった状態ではむしろ脱水が進みます。目安として室温31度を超えたら、扇風機+濡れタオル(気化熱)を必ず併用してください。それでもつらければ、涼しい場所へ移動が正解です。
Q. 水だけ飲んでいれば大丈夫?
塩分も必要です。 汗をかくと水と一緒に塩分も失われ、水だけを大量に飲むと体内の塩分濃度が下がって、かえって具合が悪くなることがあります(低ナトリウム血症)。経口補水液がいちばん確実ですが、なければ水+塩あめ・梅干し・味噌汁でも構いません。
Q. エアコンの電気代がこわくて、つけられない
気持ちはわかりますが、熱中症で救急搬送されるほうが、はるかに高くつきます。搬送された人の半数以上は高齢者で、その多くが「もったいない」と我慢していました。設定温度を28度にする、扇風機を併用する、部屋を1つに絞って家族で過ごす——こうした工夫で電気代は抑えられます。つけない選択はしないでください。
Q. 停電が長引いたら、冷蔵庫の食べ物はどうする?
停電中は開けないのが正解です。開け閉めしなければ数時間は保冷が効きます。凍らせた保冷剤やペットボトルを冷凍庫に常備しておけば、停電時に冷蔵室へ移して延命できます。詳しくは停電対策の記事へ。
まとめ|暑さ対策は「停電対策」とセットで
| ポイント | 要点 |
|---|---|
| ⭐⭐⭐ | 反応がおかしい・自分で水が飲めないなら、迷わず119番 |
| ⭐⭐⭐ | 真夏にエアコンが使えないなら我慢しない。涼しい場所へ移動 |
| ⭐⭐⭐ | 水分+塩分を、のどが渇く前に。トイレを気にして控えない |
| ⭐⭐ | 冷やすのは首すじ・わきの下・足のつけ根 |
| ⭐⭐ | 保冷剤・ポータブル電源+扇風機で「電気に頼らない涼」を備える |
| ⭐ | クーリングシェルターの場所を、涼しいうちに調べておく |
熱中症は、進行してからでは自力で対処できなくなる病気です。でも、正しい知識と少しの備えがあれば、確実に防げます。
今日やること:お住まいの自治体名+「クーリングシェルター」で検索して、家の近くの涼める場所を1つ見つけておきましょう。保冷剤を冷凍庫に入れておくのも、今日からできる備えです。
参考・出典
- 総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」 ― 搬送人数・年齢・発生場所に関する統計の出典。
- 総務省消防庁「令和元年版 消防白書(台風第15号に伴う被害と対応)」 ― 2019年台風15号の停電被害と熱中症予防通知に関する出典。
- 環境省「熱中症予防情報サイト」 ― 熱中症警戒アラート・特別警戒アラート・クーリングシェルター制度の出典。
- 環境省・厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料」 ― 水分・塩分補給や体の冷やし方に関する根拠。
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル」 ― 応急処置の手順・救急車を呼ぶ判断基準・誤嚥への注意に関する根拠。
- 総務省消防庁「熱中症の応急手当」「救急車の適正利用・♯7119」 ― 通報の判断と救急相談窓口に関する出典。